<江戸っ子の"ふんどし"はレンタルだった>

 現代人にとって日常的にパンツをはくのが自然です。 ところが江戸時代の男たちはパンツならぬ"ふんどし"を締めないのが日常で、所有率も全体の40パーセント以下との説もあるほどです。

 もともと「宵越しのゼニは持たない」のが江戸っ子。 お金も持たないくらいだから、"ふんどし"なんて持っていないのがそれこそあたり前だったというわけです。 けれども、時には"ふんどし"が必要になることがあります。 たとえば吉原に遊びに行く時です。江戸時代でも本来はちゃんと下帯をつけているのがエチケットでしたから 、つけずに吉原の遊女の前に出たりしたら
「あれー、あんさんは貧乏人でありんすかえ?」と笑われてしまいます。そこで、男たちは吉原にくりだす前に、レンタルショップに走ったのです。


 江戸には損料屋と呼ばれるレンタルショップが多数ありました。 店を構えているもの、出張販売スタイルのものなど形はいろいろでしたが 最初に借りるとき、一定の損料(保証金)を預けるシステムからこの名がつきました。損料屋では衣料品を中心に、布団や枕、蚊帳など、たいていの日用品を貸し出していました。ふんどしも同然レンタル品目にはいっていて、 しかも人気商品。江戸っ子は"ふんどし"が必要になると損料屋に出かけ、真新しいのをきりりと締めて「出撃」したという訳です。もちろん、男たちがふんどしを締めたくなるのは、なにも吉原にかよう時ばかりではありません。たとえば、人が多く集まる花見や祭りの季節になると、レンタルふんどしの需要は高まりました。

 そもそも江戸っ子は見栄っぱりですから、人がいっぱいいる場所では、どうしてもいいカッコをしたいと思っています。そして、なぜか江戸っ子は"ふんどし"を 見せることをイキだと思っていたフシがあります。よく時代劇で、着物のすそをからげて「尻っぱしょり」をし、ふんどしをちらちら見せた江戸っ子が往来を駆けていくシーンがありますが、あれがイキでイナセなパフォーマンスだったのです。 「火事と喧嘩は江戸の華」というくらいに、花見や祭りでは喧嘩がつきもの。 喧嘩の時にすぐ着物をまくって座りこむ、いわゆる「ケツをまくる」というのも「俺はいつだって真新しい"ふんどし"を締めてるんだぜ。カッコいいだろう」と見栄を張りたかったからと言われています。このように 江戸っ子の「見栄を張りたい!」という欲求から"レンタルふんどし"が生まれたのかもしれません。

参考文献 『江戸生活事典』 青蛙房
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